研究課題/領域番号 |
14550841
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
山下 那都樹 近畿大学, 理工学部, 教授 (50088407)
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研究分担者 |
石船 学 近畿大学, 理工学部, 講師 (40268462)
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キーワード | ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド) / 下部臨界共溶温度 / アクリルアミド / 水溶媒系 / ラジカル重合 / マトリックス重合 |
研究概要 |
ポリ(N-イソプロピルアクリルアミド)(PNIPAAm)の水溶液にアクリルアミドモノマー(AAm)を添加し、下部臨界共溶温度(LCST)近傍での重合反応溶液の状態変化と重合反応性について精査した結果、AAmを下部臨界共溶温度以下でAAmを溶解させた後、重合溶液の温度をLCST近傍まで上昇させたときのみ、重合反応性が確認され、LCST付近でAAmを溶解させた場合には全く重合の進行は認められなかった。また、すでに我々が見出しているポリマーモノマー間の水素結合に基づく鋳型重合系においては、モノマー濃度について最適値が存在したが、本重合系について、AAmの濃度効果を検討した結果、そのような顕著な最適値は認められず、概ね濃度の上昇とともに重合性が向上する傾向が認められた。また、AAmと水素結合による相互作用が期待できる水溶性ポリマーとして、ポリ(N-ビニルピロリドン)およびポリ(N-ビニルイミダゾール)の重合誘発効果を確認した結果、これらLCSTを有しないポリマーでは、AAmの重合誘発は認められなかった。これに対して、LCSTを有するポリ(メチルビニルエーテル)においては、PNIPAAmと同様の傾向が確認され、LCST近傍での高分子溶液の高分子マトリックス中に濃縮されたAAmモノマーが重合反応に参加していることが強く示唆される結果が得られた。また、AAmと水にわずかに溶解性を示すアクリル酸メチルモノマー(MMA)とを、LCST以下でPNIPAAm水溶液中に分散させた後、LCSTまで反応温度を上昇させたところ、対応する共重合体の生成が確認された。得られた共重合体を分析した結果、共重合体組成の異なる主として2種類の共重合体の混合物であることが明らかとなった。このことも、PNIPAAmがLCST近傍でつくり出す高分子マトリックス中に閉じこめられた両モノマーが重合していることを示しており、反応機構上非常に興味深い結果である。これら重合溶液に対応する重水中でのNMR測定による高分子マトリックスの解析については現在引き続き検討中である。
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