研究概要 |
1.ポリエチレンイミン(PEI)のコンホメーション解析 PEIの単量体モデル化合物であるN, N'-ジメチルエチレンジアミンについて分子軌道法計算でこのC-C結合およびC-N結合回りのコンホメーションエネルギーを求め、複数のH-N...H-NおよびH-N...H-C引力的相互作用の存在を示唆する結果を得た。さらに、実験的検証として、^1Hおよび^<13>C NMRのビシナル結合定数の測定・解析でコンホメーションエネルギーを評価した。実験・計算の整合性から分子内水素結合の存在を確認した。 2.溶融状態・結晶化初期のポリエーテルにみられる分子間相互作用の解明 直鎖状ポリエーテル[(CH_2)_yO]_x(y=6,8,10,12)の溶融状態・結晶化過程におけるコンホメーション変化から、分子間相互作用と結晶の形成機構を調査した。部分重水素化した試料を合成し、赤外吸収スペクトルを測定し、α、β、γ-メチレン基のC-D伸縮振動などを選択的に捕らえることで、C-O、C-C結合のコンホメーションを個別に調べた。この実験を溶融状態および結晶化過程で行い、結晶化に伴うコンホメーション変化を検討した。 3.高分子液晶モデルのコンホメーション解析 メソゲン基のモデルとしてベンゼン環をもつ単量体、2量体、4量体のオリゴマー液晶モデルを合成し、ネマチック液晶に溶解させ、その混合系の相転移挙動と液晶相安定性(ネマチック相形成温度域と転移温度の変化)の解析を行った。モデル化合物のスペーサー部、メソゲン部を全重水素化および部分重水素化した試料を合成し、重水素NMR四極子分裂幅の測定を行い、オリゴマーモデルと液晶溶媒の配向秩序度の相関について検討した。 そのほか、ポリシランについては非摂動状態での分子内相互作用とコンホメーション特性を調べ、さらにポリスルフィドが形成する分子間双極子-双極子相互作用を分子軌道法計算で調査した。
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