超臨界二酸化炭素を高分子フィルムに含浸させた後に可動極板を高分子フィルムに接触させる独自の誘電緩和測定用耐圧容器を試作して、超臨界二酸化炭素含浸下での高分子の誘電緩和測定を可能にさせた。試作された超臨界誘電緩和測定システムを用いて、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)の超臨界二酸化炭素雰囲気下での誘電緩和測定を行ったところ、超臨界二酸化炭素雰囲気下での高温のαβ緩和に起因する緩和周波数が大気圧下のそれに比べて低温側にシフトすることがわかった。それはPMMAへの二酸化炭素の含浸による可塑化により、ガラス転移温度が低下したことによると考えられる。また、超臨界二酸化炭素雰囲気下でのβ緩和の緩和周波数も大気圧下に比べて2桁以上も高くなったことから、ガラス転移温度以下での局所的な分子運動性も可塑化により増加することが明らかになった。 二酸化炭素を加圧してから昇温して得られた超臨界二酸化炭素を含浸させたPMMAでは誘電損失の周波数依存性において単一のピークが得られるのに対して、二酸化炭素を昇温してから加圧して得られた超臨界二酸化炭素を含浸させると誘電損失の周波数依存性において二つのピークの出現することが見出された。密度揺らぎを有する超臨界二酸化炭素を直接PMMAに含浸させたことで、PMMAに疎密相が形成され、それぞれの相の分子運動性に対応する2つの緩和スペクトルが誘電損失の周波数依存性に表れたと考えられる。
|