キュービック液晶相の分子凝集構造の解明とその制御

2003 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 14550846
• 研究機関: 岐阜大学
• 研究代表者: 沓水 祥一 岐阜大学, 工学部, 助教授 (80214964)
• 研究分担者: 田中 克史 京都工芸繊維大学, 繊維学部, 助教授 (50207081) ; 野島 修一 東京工業大学, 大学院・理工学研究科, 助教授 (20156194)
• キーワード: 液晶 / キュービック液晶 / スメクチック液晶 / 電場誘起相転移 / 粘弾性挙動

研究概要

4'-n-alkoxy-3'-nitrobiphnyl-4-carboxylic acid (ANBC-n)の分子凝集構造は、アルコキシ鎖長nと温度に依存している。特に注目される構造変化は、層状の1次元的な秩序相、スメクチックC(SmC)相から3次元的に等方的なキュービック(Cub)相への相転移である。本研究の目的は、Cub相における分子凝集構造、SmC相からCub相への転移挙動を詳細に調べ、その転移機構を解明するとともに、その知見をもとに分子凝集構造や相転移を制御することである。以下に得られた知見を列挙する。
(1)前年度に見出した交流電場印加によるSmC-Cub相転移の誘起機構を調べるために、無電場下および電場下でのSmC-Cub相転移挙動を偏光顕微鏡および動的粘弾性の長時間観察により検討した。詳細は引続き検討中であるが、無電場下のSmC-Cub相転移温度は、"潜在的には"従来知られている温度よりも10℃ほど低温側にあること、しかしながらこの転移は速度論的規制が極めて強く、電場はこの速度論的規制をゆるめる働きにより転移を誘起しているようである。
(2)上記ANBC-n同様SmC相とCub相を発現する液晶化合物、1,2-ビス(n-アルコキシベンゾイル)ヒドラジン(BABH-n)の相転移挙動のアルコキシ鎖長n依存性の検討を開始した。相転移挙動はアルコキシ鎖長nに依存しており、n=8,9,10ではCub相の高温側にSmC相を発現するが、nが11以上の同族体(n=11,12,14)ではCub相のみを発現した。n=10,11,12のCub相はいずれもIa3d型であり、格子定数はANBC-nとは反対に、温度に対して正の増加を示した。また静水圧力下で、圧力の増加によりn=10ではSmC相が安定化し、n=11,12では常圧では現れないSmC相が誘起され安定化した。ANBC-nとBABH-nの両系ともその相転移挙動は、アルコキシ鎖部分と水素結合系の2つの部分の温度変化の競合により決まる分子の平均形状の変化により定性的には説明できることがわかった。

研究成果

• [文献書誌] Y.Maeda, K.Morita, S.Kutsumizu: "Thermal behaviour of the thermotropic cubic mesogen 4'-n-alkoxy-3'-nitrobiphenyl-4-carboxylic acids under pressure"Liquid Crystals. 30・2. 157-164 (2003)
• [文献書誌] Y.Maeda, T.Ito, S.Kutsumizu: "Pressure-induced mesopbase of the thermotropic cubic mesogens 1,2-bis-(4-n-undecyloxylbenzoyl)hydrazine and 1,2-bis-(4-n-dodecyloxylbenzoyl)hydrazine"Liquid Crystals. (in press). (2004)
• [文献書誌] Y.Maeda, T.Ito, S.Kutsumizu: "Phase Behaviour of the Thermotropic Cubic Mesogen 1,2-Bis(4-n-decyloxy-benzoyl)hydrazine under Pressure"Liquid Crystals. (in press). (2004)
• [文献書誌] K.Tanaka, R.Akiyama, M.Takano, S.Kutsumizu, T.Yamaguchi: "Electro-Rheological Behavior of Hydrogen-Bonded Liquid Crystalline 4'-n-Docosyloxy-3'-nitrobiphenyl-4-carboxylic Acid (ANBC-22) under Sinusoidal Electric Field"Trans.Mat.Res.Soc.Jpn.. (in press). (2004)
• [文献書誌] S.Kutsumizu, M.Yamada, K.Tadano, S.Yano, S.Nojima, T.Yamaguchi: "Cubic Phases of 4'-n-Docosyloxy-3'-nitrobiphenyl-4-carboxylic Acid (ANBC-22)"Mol.Crystals Liq.Crystals. (in press). (2004)
• [文献書誌] S.Kutsumizu, S.Schlick: "Structure and Dynamics of Ionic Aggregates in Ethylene Ionomer Membranes : Recent Electron Spin Resonance (ESR) Studies"J.Mol.Struct., a special issue on "Smart membrane and molecular cavity," (invited article). (in press). (2004)