研究概要 |
造船用鋼材の相組織と疲労強度の関係の計算力学的解析を可能とすることを目的に,二相鋼の微視的硬化特性がき裂伝播抵抗特性に与える影響を結晶塑性解析により評価した. 本年度は,繰返し軟化特性が,き裂開口応力レベル(Sop)およびき裂端開口変位(CTOD)に与える影響に重点をおいて調べた.この解析を実施するために,開閉口挙動の計算に必要な接触解析機能と,繰返し硬化・軟化を表現できる新たに定式化したすべり系硬化則を,昨年度までに開発した結晶弾塑性有限要素解析コードに組み込んだ. 解析では,SopおよびCTODを評価する際に使用すべき硬化特性の設定法(等方・移動硬化の別,および潜在硬化の考慮の要・不要など)について検討を加えたのち,繰返し軟化の程度を変化させた複数のすべり硬化特性についてき裂進展計算を行ってSopおよびCTODの計算値を比較した.すべり系は平面2すべり系を仮定し,荷重方位は2重すべりおよび単一すべりを設定した.計算は,最大応力拡大係数Kmax=2.8MPa m^0.5,応力比R=0の条件で行い,最小要素辺長は0.5μmとし,き裂が10要素辺長進展した時点のSop,CTODを評価した.繰返し軟化特性は,定歪負荷における応力振幅減少量ΔSaが0〜15%の範囲で設定した. その結果,以下の知見を得た. 1)本研究で計算した条件では,等方・移動硬化の別,および潜在硬化の考慮の有無がSopおよびCTODの計算値に与える影響はほとんど無視できた.このため,移動硬化,潜在硬化パラメタ=1.0の条件でシリーズ計算を実施した. 2)本研究で計算した条件では,結晶方位によらず,繰返し軟化の程度が大きいほどき裂生成面のPlastic wakeに生じる塑性歪量が増大し,Sopが上昇した.ΔSa=15%の繰返し軟化を設定した際のSop上昇は約25%であった. 3)本研究で計算した条件では,結晶方位によらず,繰返し軟化の程度によらずCTODはほぼ一定であった.
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