研究概要 |
露天採掘跡地の景観評価において最も基本的な事項は、採掘跡地がどこから見えどこから見えないか、すなわち可視・不可視領域を判別することである。そのため、現状における採掘場の可視領域を求める際には、現在の採掘範囲を正確にモデリングすることが第一条件となるが、露天採掘場の切羽は開発計画図通りに展開されていない場合が多く、また経時的に拡大していくため、現状把握が必要である。そこで、地上型3次元レーザースキャナ(RIEGL社製3-DスキャナLMS-Z420)を用いて採掘場の切羽および周辺の斜面地形を面的に計測・解析し、監視を行なう技術について、データ取得・解析・表示手法・影響要因項目等を検討した。その結果、最長測定範囲350m、最大角度範囲80°×330°、測定精度±25mmで採掘場の地形情報をリアルタイムで取得する計測システムを確立した。 採掘跡地の可視領域を予測する場合、標高データに基づく地形の起伏によって可視・不可視を判別することが基本となる。しかし、地表上には樹木や構造物などの景観遮蔽物があり、これらによって採掘跡地が見えなくなる領域がある。そこで、景観遮蔽物を考慮した可視・不可視を判別する方法として、GISのコアソフトArc View 3.2とラスターデータ解析用の拡張モジュールであるSpatial Analyst 1.1を使用した。標高データは、国土地理院発行の「数値地図50mメッシュ(標高)」、地表上に存在する樹木や構造物などの分布状況を知る手段として、「数値地図25,000(地図画像)」とランドサット画像を利用した。 景観評価を規定する要因としては、視点から採掘場までの距離(視距離)、採掘場を見上げる角度(仰角)および採掘場の見えの高さが重要である。そこで、露天採掘場の景観評価において重要性が高い視距離、仰角、見えの高さの3因子を、GISのマップ演算機能を用いて解析することによって、景観重要度を予測する方法について検討した。その結果、GISを用いることで、採掘跡地の見えの大きさや仰角を分類して表示することが可能となった。また、見えの大きさと仰角を考慮することで、景観重要度予測式を導出することができ、GISを用いて対象地域の可視領域内での景観重要度予測が可能となった。
|