本年度の研究では、円柱状爆薬の軸心起爆技術を用いて平滑な3種の金属円筒を超高速膨張させ、変形挙動を計測するとともに破片回収を行った。すなわち金属円筒(0.14%炭素鋼、SUS304ステンレス鋼、S55C炭素鋼: Do×t×L/34×3×100mm)の内部にPETN爆薬を同軸円柱状(完全充填または空気層設置)に装填し、中心軸に設置した銅細線をコンデンサーからの衝撃電流で一斉爆発・起爆させて円筒状発散爆轟波を生成した。変形計測実験では、高速度カメラIMACON468の流し写真とコマ撮り写真から円筒は軸対称、軸方向一様に高速膨張(円筒壁速度:3-7×10^2m・S^<-1>)し、周方向の平均ひずみ速度は10^4s^<-1>に達すること、SUS304鋼における早期の分裂破壊挙動などが分かった。また線爆発を光源とした表面観測により、円筒の分裂開始とガス噴出にいたる挙動を計測することができた。エネルギーの釣合いのみに基づく簡易変形速度推定は実測値の33-44%であった。 変形観測結果はAutodyn2Dなどの流体解析コードによる数値解析結果と比較し、高速域での構成式や破壊則(限界応力・ひずみ)について考察し、各試験円筒における破壊発生時期を大略推定することができた。さらに円筒の破壊挙動や破断ひずみについて検討するために緩衝材を充填した鋼鉄チャンバーを開発・製作してピット内に設置し、その中心部で同様の爆発実験を行った。その結果84-99%の回収率で破片回収ができ、各条件下における金属円筒の分裂形態(短冊状破片)について把握することができた。また各破片形状を計測した結果を統計処理し、周方向破断間隔を表すGradyの分裂モデルに基づく検討を行った結果、本モデルによって大まかな破壊形態の推定には利用できることが分かった。
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