研究概要 |
定容燃焼容器において,二成分混合燃料の組成,混合割合,雰囲気条件をパラメータとした着火実験を行った.その結果,高自着火性成分のセタン価がある値以上になると,低自着火性成分が支配的な混合割合であっても,その着火性は高自着火性成分に大きく依存し,それは高自着火性成分における低温酸化反応の発熱量によることがわかった.なお,本実験条件下では混合する両成分を室温・大気圧場において液体として存在する直鎖系炭化水素とした場合,高自着火性成分がn-デカンより高炭素数の燃料でそのような傾向が得られた. さらに,沸点が大幅に異なり,高自着火・高沸点成分に低自着火・低沸点成分を混合した燃料と沸点が比較的類似な高沸点の二成分を混合した際の低温酸化反応の開始時期および高温酸化反応の開始時期の二時期における反応開始位置を化学種発光画像から求めた.低温酸化反応開始時においては,沸点の近い二成分混合燃料の場合,噴霧液相長さとほぼ同位置から化学種の発光が確認できるのに対し,沸点の異なる混合燃料では液相長さから離れた噴霧先端で発光が開始された.これは低沸点・低自着火性成分が噴霧上流で早期に蒸発するため,その成分が高濃度な領域では高自着火性成分の反応を阻害し,高自着火性成分が支配的な濃度の領域から反応が開始されたためである.一方,高温酸化反応の開始時期では,沸点の離れた二成分がより上流部で反応を継続することがわかり,低沸点成分の混合に伴う二相領域の形成により高自着火性成分の蒸発が促進されていることも確認した. 以上の結果から,二成分混合燃料では高い蒸発性と着火性の双方を有する燃料が作製可能である知見を得,本研究ではその基礎的データを構築した.ただし,二成分混合燃料の適用には両成分の空間的分布とそれらの化学反応特性を勘案した制御法の検討が肝要である.
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