研究概要 |
湛水条件下でのイネの発芽、幼苗の生育に重要だと考えられるアルデヒド脱水素酵素遺伝子ALDH2とアセチルCoA合成酵素遺伝子ACSのcDNAクローンを単離し、その一次配列を決定した。その結果、ALDH2、ACSともにイネゲノム中に2個ずつ遺伝子が存在した。さらに個々の遺伝子発現の器官特異性および低酸素条件下での反応性等を調査したところ、ALDH2aとACS1,ACS2が湛水条件下で発芽させたイネ幼苗内で働くと考えられた。ACSの経路によって生成されたアセチルCoAが脂肪酸合成に使用されている可能性が考えられたので、脂肪酸合成部位であるプラスチドにACSが局在するかどうかを解析した。ACS1,ACS2遺伝子のN末端側と緑色蛍光タンパク質GFPの融合遺伝子を作製し、その融合遺伝子をイネ緑葉で一過的に発現させたときのGFPの局在部位を調べたところ、ACS1はプラスチド、ACS2は細胞質に局在するという結果を得た。この結果からACS1が脂肪酸合成に関与している可能性が考えられた。湛水条件下でのイネの発芽、幼苗の生育へのALDH2aとACS1,ACS2の機能を明らかにするために、現在、dexamethazone(DEX)誘導性のプロモーターを用いたALDH2a, ACS1,ACS2のセンス、アンチセンス、RNAiのプラスミドを作製し、イネに形質転換している。今後、これらの形質転換イネを湛水条件下で発芽させ、初期生育を調査する。
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