スギ花粉症対策に有効な遺伝資源を探索するため、これまでに約1万1千本のタテヤマスギの中から、雄性不稔と思われるスギを2個体(M-1、M-2)選抜した。今年度はてこれらの個体の花粉の崩壊過程の確認と種子の発芽率について調査を行った。M-1、M-2から成熟した雄花を採取して顕微鏡観察を行った結果、昨年と同様の異常が認められた。このことから、これらの個体は遺伝的な要因によって正常な花粉が形成されないものと判断された。次に、M-1、M-2から自然交配によって得られた種子を採取し発芽率の調査を行ったところ、M-1は0%、M-2は15%であった。このことから、M-2は花粉症対策の新たな遺伝資源として期待されるものの、M-1は両性不稔の可能性が高く、育種の母材料として利用するは困難であると考えられた。 低アレルゲン性のスギを選抜するため岐阜県の精英樹59系統から花粉を採集し蛍光サンドイッチELISA法によってアレルゲン(Cry j 1)を測定した。その結果、4〜5(pg/個)を中心とした正規分布を示し、2(pg/個)未満の個体が6系統選抜された。これらの個体は、精英樹であることから林業上の利用価値も高いと考えられる。また、岐阜県郡上白鳥町と岐阜市内のスギ林(約60個体)から花粉を採取しCry j 1量を測定した結果、白鳥では、3.55±1.54(pg/個)、岐阜市では6.17±2.05(pg/個)となり、地域間で、5%水準の有意差が認められた。この結果から、空中に飛散している花粉のアレルゲン量は、地域によって異なっていると予想された。
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