研究概要 |
サヤダイコンはインドから東南アジアで栽培されている.このうち,タイ北部で栽培されるサヤダイコン(現地名:パッキフッド)は若い莢が食材とされている.本研究では,パッキフッドならびに日本で栽培されるダイコン品種を用いて,種子形成期から発芽期における遺伝子発現のパターンと発芽の低温に対する反応を解析することにより,低温発芽能に関連する遺伝子を検索する. differential display法を用いて,低温発芽時に誘導される遺伝子群の検索を試みた.ランダムプライマー203種を用いてPCRを行なった結果,29種のプライマーを用いた場合に5℃に特異的な29のバンドが得られた.このようなプライマーを用いて,再現性を確認した後,バンドを切り出し、29バンドについて塩基配列を決定した.BLASTによる相同性検索から,システインプロテアーゼ,アデノチル-ホモシステイン-ハイドロアーゼ,アルギニン-デカルボキシラーゼと相同性が認められた。低温下での発芽にともなってストレス誘導性遺伝子として知られる遺伝子が発現しているものと思われた. 低温ストレス条件下でのダイコン発芽種子由来のcDNAライブラリーからABA合成のキー酵素である9-cis-epoxycarotenoid deoxygenase合成遺伝子をクローニングした.低温発芽性に関して明らかな差異の認められるサヤダイコンと日本のダイコン品種を用いてその発現について解析した.全長cDNAは,2338bpからなり,5'-flanking regionには,1つのpolyadenylationコンセンサス配列が認められた.コード領域は,1791bpの単一のORFであり,予想されるアミノ酸配列は597残基,65.6kDaのポリペプチドと計算された.発現は両品種において,種子形成期間,発芽直後に低温ストレスを受けた時期にその発現が認められた。
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