研究概要 |
新品種候補系統の生産力検定試験におけるような多段階収量選抜では,3つの異なった選抜方式,すなわち,各選抜段階で上位一定割合の系統を選抜する方式(パターンI),各段階で対照品種よりも高い収量を示す系統を選抜する方式(パターンII)および各段階である一定値よりも高い収量を示す系統を選抜する方式(パターンIII)が適用可能である。実際の選抜試験ではパターンIIが一般的に用いられている。本年度の研究では,出発系統数が20,40および60の集団について、モンテカルロ・シミュレーションで優良系統が獲得される確率(成功確率)を求め、上記の3つの選抜方式の効率を比較した。計算結果により,パターンIが最も効率的であると結論し、併せて、優良系統を含まない集団に資源を費やす無駄を最小限に抑えるための補足策として、最初の第一段階目で有望な収量スコアを示す系統が一つも無ければその時点で全系統を棄て、一つでもあればパターンIで選抜を続けることを提案した。選抜段階数は、遺伝子型と年次の交互作用が存在しない場合には3で十分であるが,大きな交互作用が予想される場合や初めの2,3段階目で認められた場合には,3より多くしても引き合う。パターンIIとIIIは、遺伝子型と年次の交互作用や年次効果による誤差の影響を大きく受けるため,効率的ではない。また、各段階における各系統の収量判定は、当該段階で得られた収量スコアだけでなくそれ以前のすべての段階のスコアをも加味して行うことが重要であり、この場合、第一段階から当該段階までのスコアの重み付けは、それぞれの段階の誤差分散の逆数でするのが最適であることを示した。
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