研究概要 |
本研究は、窒素動態に関するself destructionの概念を基礎としながら、窒素の再転流速度、窒素固定活性、発育の3者の環境反応および遺伝的変異を解析し、青立ち発生の環境的・遺伝的要因を明らかにすることを目的としている.本年は,開花期以降の高温が青立ち発生に及ぼす影響を制御環境下で調査するとともに,組替え型自殖系統群の青立ち発生状況の調査を実施した. 1.温度環境がダイズの窒素動態および青立ち発生に及ぼす影響 温度傾斜型チャンバー(TGC、W2m×L25m)内でダイズ6品種を群落栽培した,開花期以降の温度条件を,外気温から外気温+約3℃の範囲で5段階設定した.全品種を通じて,青立ち発生は高温によって助長される傾向がみとめられた.青立ち発生程度には温度条件を超えた明らかな品種間差異が認められ,品種タチナガハが最も発生しやすく(平均発生程度0.52±0.16),サチユタカが最も発生しにくかった(同0.20±0.05).1区16個体について子実肥大器官,着莢率,1莢粒数,不完全粒率および1粒重を調査し,個体レベルでの青立ち発生との関係を解析した.その結果,どの要素も青立ち発生との間に有意な関連性を示さず,従来指摘されてきたように発育期間の変動や生殖器官の発達不全が青立ち発生の原因になるものとは考えにくかった.その一方で,子実収量の高い個体で青立ちが顕著に発生する傾向がみられ,窒素シンクの低下よりも窒素ソース能の増大が青立ち発生原因になり得るという興味深い結果が得られた. 2.青立ち発生の遺伝的要因の調査 品種Pekingとタマホマレの交雑から育成されたRIL系統群(96系統)を対象に,成熟期に青立ち発生程度の調査を実施したところ,0.0から1.0までの幅広い変異が観察され,青立ち発生程度に関する明らかな遺伝的変異の存在が示唆された.
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