研究概要 |
本研究は、窒素動態に関するself destructionの概念を基礎としながら、窒素の再転流速度、窒素固定活性、発育の3者の環境反応および遺伝的変異を解析し、青立ち発生の環境的・遺伝的要因を明らかにすることを目的としている.本年は土壌水分が青立ちの発生に及ぼす影響の調査(継続),組替え型自殖系統群を用いた青立ち発生特性の量的遺伝子座の推定,子実肥大期間の長さを温度と日長から予測するモデルの構築を,それぞれ実施した. 1.土壌水分がダイズの青立ち発生に及ぼす影響 品種タチナガハを圃場条件下で栽培し,生殖生長期間中の土壌水分を制御して湿潤区と対照区を設けた.地上部の乾物生産と窒素蓄積には処理区間差がなかったが,湿潤区の方が莢先熟の発生が多くかつ導管液中のサイトカイニン(トランスゼアチンリボシド)量が子実肥大期間を通じて高く維持されていた.これより,莢先熟発生に窒素の収支だけでなく地下部からのサイトカイニン供給が関与することが示唆された. 2.青立ち発生の遺伝的要因 Peking×タマホマレのRIL系統群を対象にした2年次の調査を解析し,青立ち発生に関連する2つの遺伝子座を明らかにした.しかしその内の一つは1年次の結果のみから見出されたものであり,青立ち発生の遺伝的要因が環境の影響を強く受けることが示唆された.また,Stressland×タチナガハのF3系統の形質調査から,青立ち発生程度の系統間差異が有限/無限伸育性と極めて密接な関係にあることがわかった. 3.ダイズの発育モデル これまでの圃場実験結果にもとづき品種タチナガハの子実肥大期間の長さ(R5〜R7)を日長と温度の関数としてモデル化した。青立ち発生程度の大きいダイズでは,実測値された子実肥大期間が気象による予測値よりも遅れる傾向があった.
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