研究概要 |
1998年に高知県内の早期栽培圃場で異常(不時)出穂が確認された極早生水稲品種とさぴかの出穂特性を明らかにするため,交配親,高知県育成品種ならびに北海道から九州地域で育成された品種など,計50品種・系統を供試し,早期栽培で一般的な育苗期間にあたる3月〜4月の自然日長下において,温度に対する出穂反応を比較検討した.3月10日に1粒播した株まきポットを出芽後,窒素成分で1.5,3.0gm^<-2>施用した水田土壌入りコンテナに密着設置し,昼夜温をそれぞれ12時間,30℃/20℃,25℃/25℃および25℃/15℃に設定した自然光型ファイトトロン内へ搬入して,播種からの日平均気温の積算値が1300℃日(以下播種から1300℃日)に達するまで温度処理を行った。播種からまでに出穂した品種・系統割合は,温度区間では25℃/25℃区,窒素施肥量区間では1.5gm^<-2>区で高く,北海道育成品種ではこれらの区で出穂が早まる傾向がみられた.これに対し,品種とさぴかは温度,窒素施肥量区間で大きな出穂変動はみられず,播種から1000℃日以上に達すると出穂し,播種から1300℃日までに出穂した品種・系統の中でも,播種から止葉展開までの積算温度が低く,早く出穂した.これは最終主稈葉数が少なく,平均出葉積算温度(播種から止葉展開までの積算温度/最終主稈葉数,℃日葉^<-1>)も低かったためで,品種とさぴかはこれら2要素に対する温度や窒素施肥量の影響は比較的小さく,主稈の出穂時期は播種からの積算温度によって推定できることが示唆された.また,品種とさぴかについて、上記と同様のポット苗の育苗日数(葉齢)、育苗途中の窒素追肥の有無、硬化期の温度、移植時の苗への断根処理の有無、移植後の土壌還元処理の有無および移植後の温度条件(戸外とガラス室内)が主稈出穂迄日数に疎ぼす影響について検討した結果、苗の葉齢、窒素追肥、移植後の温度条件によって主稈出穂まで日数が有意に異なることが明らかとなった。
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