研究概要 |
サツマイモより2種類の細胞壁結合型インベルターゼのcDNA(IbCINとIbCIN1と名付けた)をクローニングした.サツマイモ品種コガネセンガンにおける器官別(葉身,葉柄,ほふく茎,不定根,塊根及びいも根)のIbCIN遺伝子の発現は不定根といも根のみで認められた.IbCIN1遺伝子は不定根といも根で発現レベルが高かったが,塊根においても遺伝子の発現が認められた.また,IbCIN遺伝子の発現は塊根形成にともなって消失した.IbCIN1遺伝子の発現も塊根形成にともなって発現レベルが低下したが,苗植付け後28日目塊根においても遺伝子発現が認められた.さらに,塊根生産能力の高いコガネセンガンと塊根生産能力の低い中国25号について不定根におけるIbCIN遺伝子とIbCIN1遺伝子の発現レベルを比較した.IbCIN遺伝子の発現レベルはコガネセンガンに比べて中国25号で高かったのに対して,IbCIN1遺伝子の発現レベルは中国25号に比べてコガネセンガンで高かった.また,塊根におけるIbCIN1遺伝子の発現はコルク皮層に特異的であった. 次に,IbCIN遺伝子とIbCIN1遺伝子の発現制御を明らかにするため,コガネセンガンを用いて遺伝子発現に及ぼす糖とベンジルアデニンの影響を検討した.IbCIN遺伝子の発現レベルはスクロース特異的に高まったが,IbCIN1遺伝子では遺伝子発現に及ぼす糖の効果は小さかった.また,IbCINとIbCIN1のいずれの遺伝子もベンジルアデニンによって遺伝子発現が誘導された. 以上の結果より,サツマイモには塊根においてコルク皮層の形成に関わる細胞壁結合型インベルターゼ遺伝子が存在し,サイトカイニンによって遺伝子発現が制御されていることが示唆された.
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