研究概要 |
近年、海浜地域は自然への配慮のない開発や過度のレクリエーション利用によって、海浜植物とその生息環境とともに海浜特有の自然景観も損なわれつつある。本研究は失われつつある海浜植物を取り戻すために海浜地域への導入と定着のための手法を示そうとするものである。今年度は、野外での播種実験に供試しようとする種子の発芽能力を実験室内で確認した。 ハマヒルガオ 北海道石狩浜で採取した種子に硫酸処理を施すと、25℃から30℃では速やかに発芽し90%以上の発芽率を示したが、10℃では発芽開始が遅れた。また、無処理種子の発芽率は2%にとどまった。この結果は既報の宮崎県新富町で採取した種子の発芽状況とほぼ同じであり、地理的に離れた北海道石狩浜と宮崎県富田浜のハマヒルガオ種子には、ともに硬実休眠が存在し、硬実休眠打破後の温度に対する発芽反応がほぼ同様であることが確かめられた。 ハマエンドウ 北海道石狩浜で採取したハマエンドウの種子は、40分間の濃硫酸処理を施すことによって、15〜20℃の温度で90%以上発芽した。また、無処理の種子は6%以下の発芽率であった。このことは既報における宮崎県高鍋町で採取したハマエンドウでの発芽,結果と一致し、北海道石狩浜と宮崎県高鍋町のハマエンドウがともに硬実休眠を持つことと、硫酸処理によって容易に硬実休眠が解除されることが確認できた。
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