研究概要 |
近年、海浜地域は開発や過度のレクリエーション利用によって、海浜植物とその生息環境が損なわれつつある。本研究は失われつつある海浜植物を取り戻すために海浜地域への導入と定着のための手法を示そうとするものである。今年度は、播種時期と埋土深を変えて海浜に実際に種子を播種し,その後の実生の出現と生存状況を調査した。あわせてそれぞれの播種時期について,深度別に土壌水分と温度を測定した。 土壌水分・温度条件 地下1cmでは,土壌水分が永久萎凋点を下回ることが多く,温度も日較差が大きくなり,とくに高温時には50℃付近に達することもあった。 ハマヒルガオ 秋播き,夏播きともに埋土深5cmで最も高い出現率と生存率を示した。それよりも浅い1cmでは高温と土壌水分の不足によって枯死し,それよりも深い埋土深では,種子は発芽したものの貯蔵養分量の不足によって砂中で枯死した。生存率の高かった5cmの埋土深では,夏播きでも播種粒数のうち70%近くの実生が年内まで生存していた。しかしその他の埋土深では,20%以下の低い生存率にとどまった。一方,秋播きではいずれの埋土深でも夏播きを上回る生存率が得られ,とくに5cmの埋土深では年内に80%,積雪のある冬を越した春になっても80%の生存率を維持できた。 ハマエンドウ 夏播きでは,いずれの埋土深でも15%以下の生存率にとどまった。しかし,秋播きでは,5〜15cmの埋土深で65%以上の生存率を得,冬を越した春にも60%前後の生存率となった。 以上のことから,播種時期は両種ともに秋期,種子の埋土深はハマヒルガオでは5cm,ハマエンドウでは1-10cmが適切であると結論した。
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