研究概要 |
これまで渋ガキの可溶性タンニンは細胞のシンプラストに多く存在すると考えられてきた.本研究ではこのことを確認するために,アポプラスト液とシンプラスト液における可溶性タンニン含量を測定するとともに,両液におけるアセトアルデヒドおよびエタノール含量の測定もあわせて行った. 実験には収穫適期に採取した渋ガキ‘平核無'果実を供試し,収穫後直ちにアルコール(エタノール)と炭酸ガスで脱渋処理した.処理後14日目まで経時的にアポプラスト液,シンプラスト液および果肉の可溶性タンニン含量ならびにアセトアルデヒドとエタノール含量を測定した.なお,果実の果肉切片を遠心して得られた液をアポプラスト液とし,アポプラスト液採取後の果肉切片を凍結させ再度遠心して得られた液をシンプラスト液とした. その結果,収穫時の可溶性タンニン含量はシンプラスト液よりもアポプラスト液で約4倍高いことが判明した.その後,可溶性タンニン含量は炭酸ガス脱渋区では1日目に急激に低下したのに対して,アルコール脱渋区では6日目まで徐々に低下した.アポプラスト液のアセトアルデヒド含量は,炭酸ガス脱渋区で1目目に増加し,2目目以降は大きな変化は見られなかった.シンプラスト液のアセトアルデヒド含量は,炭酸ガス脱渋区で1目目に急激に増加し,2目目以降は徐々に低下した. 以上の結果より,渋ガキに含まれる可溶性タンニンはシンプラスト液よりアポプラスト液で含量高いことが確認された.さらに,炭酸ガス脱渋区では1日目に急激に蓄積したアセトアルデヒドによってアポプラスト液に含まれる可溶性タンニンが不溶化し,脱渋が速やかに進行すると考えられた.
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