カキ果実は、品種栽培条件、収穫時期などによって、収穫後急速に軟化し商品価値を失う場合がある。特に、ハウス促成栽培「刀根早生」、「西条」は、この傾向が激しく、流通現場で大きな問題になっている。今回の研究で、収穫後のカキ果実では、水分ストレスによって、まずヘタ部でのエチレン生成が誘導され、このエチレンが果肉部に拡散し自己触媒的エチレン生成を促進することを明らかにした。さらに、これらのエチレンがポリガラクチュロナーゼ、セルラーゼおよびエクスパンシンなどの細胞壁分解酵素遺伝子の発現を誘導し、果実軟化が急速に進展することを明らかにした。これらの軟化機構の解明に基づいて、カキ果実の軟化防止技術として、有孔ポリエチレン袋包装による水ストレス緩和措置およびエチレン作用阻害剤1-MCP処理を確立した。有孔ポリエチレン袋包装は、安価かつ簡易な軟化防止技術でありね特にハウス促成栽培「刀根早生」果実に有効であった。有孔ポリエチレン袋包装は、実際の流通現場での実証試験でも約10日間の軟化抑制効果を示し、実用技術として利用可能であった。「西条」果実では脱渋処理に2日間の炭酸ガス処理を要し、この処理がエチレン生成を誘導するため、有孔ポリエチレン袋包装だけでは十分な軟化抑制効果を得られなかった。そこで、脱渋処理中に1-MCPを平行して処理したところ、顕著な軟化抑制効果を示した。1-MCPは人体毒性もほとんどなく、処理は脱渋過程に影響しなかった処理は収穫後24時間以内に開始する必要があり、処理濃度としては100ppb〜1000ppbの濃度が適当であることも明らかにした。現在、1-MCPは植物生長調節剤として認可申請中であり、数年中にカキ果実の流通現場で、軟化防止剤として利用可能になることが期待できる。
|