研究概要 |
カキ果実の軟化機構および軟化防止技術に関して昨年度までに得られた成果に基づいて、研究を深化させ、渋ガキとしてハウスおよび露地栽培栽培'刀根早生'、露地栽培'平核無'、'西条'果実、甘ガキとして、露地栽培'富有'果実を用い,遺伝子レベルでの軟化機構の解析および防湿段ボール箱および1-MCP処理による軟化抑制効果に関する実際の流通条件下で実証試験を行った。 カキ果実から、エチレン生合成関連酵素としてACC合成酵素、ACC酸化酵素遺伝子を、細胞壁分解酵素としてポリガラクチュロナーゼ、エンドグルカナーゼおよびエクスパンシンを遺伝子をクローニングし、数種カキ品種のエチレン生成および果実軟化と関連して、その発現特性を調査した。その結果、カキでは収穫後の水ストレスによってヘタ部でDK-ACS2が誘導され、少量のエチレンが生成し、そのエチレンが果肉部に侵入し、DK-ACS1の発現を誘導することによって多量のエチレンが生成することを示した。さらに、果実軟化にはエチレンによって支配されたDK-PG1,DK-Cel2,DK-Cel32,DK-Exp2の各遺伝子発現が重要であることを明らかにした。 防湿段ボール箱の利用による水分ストレス軽減措置およびエチレン作用阻害剤の1-MCP処理はいずれも顕著な軟化抑制効果を示した。ただし、両者の併用処理は、作用点がほぼ同一であることから極僅かな相加的な効果示したのみであった。実際の流通現場での実証試験を行ったところ、対照果実は2,3日で果実軟化が進み商品性を失うのに対し、防湿段ボール箱および1-MCP処理果実は出荷後少なくとも1週間は良好な果実品質を維持した。防湿段ボール箱の利用は'刀根早生'果実を中心に実用化の段階に入り、1-MCP処理の利用は'西条'果実を中心に来年から実用化の見通しである。
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