研究概要 |
九州特産果樹である'晩白柚'の雌性配偶子由来半数体が発芽7年目にして開花した。そこで、この半数体の形態的特徴とその生殖機能について調査した。さらに、半数体新梢へのコルヒチン処理による二倍性半数体の育成について検討した。その結果、半数体の葉は,二倍体と比較して有意に小さく,細長くなる傾向が認められ,単位面積当たりの葉重が有意に軽く,葉が薄かった.気孔の大きさも縦径と横径ともに有意に小さかった.また,半数体の花は,二倍体と比較して有意に小さくなり,奇形が多く観察された.半数体の花粉は,乾燥花粉の縦径と横径ともに二倍体と比べ有意に小さく,やや丸くなる傾向が認められた.花粉の染色稔性と発芽稔性は,二倍体と比較して著しく低かったが,それぞれ1.6%と0.4%の稔性を示した.次に,半数体といくつかの二倍体とを交雑した結果,半数体を種子親とした場合には,全く着果しなかったが,二倍体品種を種子親にした場合には,'宮内'イヨカンなど4品種で着果が認められ,完全種子が得られた.それらの種子を播種したところ,ほとんどの種子が正常に発芽し,実生が得られた.これらの実生の倍数性を解析した結果,二倍体と三倍体であった.また,'宮内'イヨカンの実生は,RAPD分析の結果と'晩白柚'の葉の特徴である翼葉を有することから雑種であることが明らかとなった.さらに,二倍性半数体を獲得するために,新梢にコルヒチン処理を行った結果,0.05%と0.1%の処理区で二倍体と四倍体の混数体がそれぞれ1本ずつ得られた.そこで,それらの混数体を1芽ずつカラタチ台に接木し,新たに伸長した新梢をフローサイトメーターで解析した結果,二倍体と四倍体の混数体の系統から完全な二倍体と推定される個体が得られた.
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