研究概要 |
カンキツゲノムを部分的に導入するために,半数体'晩白柚'を材料としていくつかの単胚性品種と正逆交雑を行った.材料には,半数体'晩白柚'や'清見'など9品種を供試した.完全種子は常法によりシャーレ上に播種し,不完全種子は培養を行い,実生を育成した.得られた実生は,フローサイトメーターと染色体観察により倍数性を解析した.また,それらの幼葉から全DNAを抽出し,RAPD分析により雑種性の解析を行った.さらに,'清見'と半数体'晩白柚'との交雑で得られた実生は,Befuら(2000)の方法に従いクロモマイシンA_3(CMA)染色による染色体識別を行った. 半数体'晩白柚'といくつかの二倍体品種との正逆交雑を行ったところ,半数体'晩白柚'を種子親とした場合,全く着果が認められなかった.一方,花粉親とした場合には,全ての交雑組合せで着果が認められ,'清見'等の4品種では種子が得られたが,二倍体'晩白柚'では種子が得られなかった.得られた種子を播種したところ,完全種子は正常に発芽し,完全な植物体が得られた.それらの倍数性を調査した結果,'南風'との交雑で三倍体が1個体確認された以外はいずれも二倍体であった.なお,異数体については全く観察されなかった.次に,RAPD分析による雑種性の解析を行ったところ,それらの実生はそれぞれの両親の特異的なバンドパターンを有していた.さらに,'清見',半数体'晩白柚'およびその交雑から得られた実生についてCMA染色による染色体識別を行った結果,半数体'晩白柚'の染色体構成は1A+1B+1C+2D+4Eであり,ブンタン類特有のA型染色体を有していた.得られた実生の染色体にはA型染色体が確認された.'清見'ではB〜E型の染色体で構成されていたことから,得られた実生のA型染色体は半数体由来であると推察された. 以上のように,得られた実生は雑種であることが確認され,本半数体に正常なn=9の花粉が生産されていることが明らかとなった.しかし,異数体は作出できず,部分的なカンキツゲノムの導入はできなかった.今後,半数体'晩白柚'における雌性および雄性配偶子の形成過程について詳細な細胞遺伝学的解析を行う必要があると考えられた.
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