研究概要 |
高等植物は、様々なストレスに対して巧みに防御・応答する。チューリップやバラ科核果類植物が、病原菌感染や昆虫による食害、あるいは物理的損傷を受けると傷口にコロイド状多糖類、ガムを分泌し、病原菌の侵入や増殖、そして水分の損失を防いでいる。2002〜2004年度の研究において果樹・花卉園芸上、重要な問題であるガム溢泌のホルモン制御について検討し、以下の成果を得た。 ・多肉植物のCrassulaやKalanchoeではジャスモン酸類(JAs)により離層形成が起こり、短期間に葉が脱離すること、さらに、脱離した葉の脱離部そして葉が着生していた茎部域から溢泌が起こることを見いだし、その解析結果とあわせ、Acta Physiol.Plant.に発表した。 ・サクラ(Prunus yedoensis)ではエチレン(Eth)はガム形成を誘導したがJA単独ではその様な効果を示さず、Ethがガム形成に主導的役割を果たしていること、さらにガム形成における健全葉の必要性を示唆し、Biology and Biotechnology of the Plant Hormone Ethylene IIIに発表。 ・スモモのガム形成を対象に、JA-MeとEthの相互作用、JAsあるいはEthの生合成阻害剤や多糖類合成阻害剤の影響を検討した結果、JAsとエチレンが相乗的ガム形成作用を示す際、JA生合成阻害剤はEth誘導性ガム形成を阻害するが、Eth生合成阻害剤はJAs誘導性のそれを阻害しないことを見出し、Acta Horticulturaeに発表。 ・チューリップ球根では、Eth単独ではガム形成せず、JAsとの同時処理によって相乗的作用を発揮する。この両ホルモンのガム形成作用に球根の保存期間が大きく影響した。その成果をJ.Fac.Agr.,Kyushu Univ.に発表。モモ枝梢におけるJAsとEth作用をアントシアン形成、離層形成およびガム形成を指標に調べ、それぞれの現象に対する両ホルモンの関与を考察し、Zeszyty Problemowe Postpow Nauk Rolniczychに論文発表した。 ・チューリップ茎葉を対象に、JAsがガム形成の内的制御因子であることを機器分析法を導入し示した。さらに、その生成が糖代謝と密接に関わることを多糖類合成基質となる可溶性糖レベルで示唆すると共に、ガムが均質なグルクロノアラビノキシラン分子種からなることを示した。一連の結果を3報の形でActa Horticulturae, J.Plant Physiology, J.Plant Researchに発表。
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