研究概要 |
フラボノイド3',5'-ヒドロキシラーゼ(F3',5'H)遺伝子を導入して育成された遺伝子組換えカーネーション品種を用いて、新規な青色花色の発現機構の解明を各種クロマトグラフィーを用いて試みた。その結果、花色素としてはデルフィニジン型のリンゴ酸が結合したアシル化アントシアニンが、フラボノール成分としては、ケンフェロールのO-グリコシド型の配糖体が全ての品種に見出された。また、フラボンとしては、一部の品種にアピゲニンのC-グルコシド型の配糖体が見出された。これらの結果から、遺伝子組換えカーネーションの青色系品種では、F3',5'Hの酵素の発現により、組み換え前の母本に存在しない新規な花色素(アントシアニジンのB環の水酸化のレベルが高いアントシアニン)に生じ、他のフラボノイド成分については、この酵素の影響がないことが認められた。花以外の器官(茎、萼、苞、葉)については、ケンフェロールのO-グリコシド型の配糖体のうち、トリグリコシド型の配糖体が特異的に見出された。また、アントシアニンを最終的に修飾する酵素である配糖体化酵素(5GT)とアシル化酵素(3AT)について、蕾から調整した粗酵素液での酵素活性を調査した結果、配糖体化については僅かな酵素活性が認められたが、アシル化(マリル化)につては活性が認められなかった。さらに、これらの品種の交雑育種の可能性を探るために、花粉の稔性を調査した結果、一部の品種については、発芽能力を持つ花粉が認められた。
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