研究課題
キュウリ黄化病は25年以上も前に初発生が報告されて以来、各地のハウス栽培のキュウリやメロンで主に発生してきたが、最近では愛媛県の露地栽培キュウリに発生して大きな被害をもたらしている。しかし、その病原ウイルス(cucumber yellows virus, CuYV)が純化できないため、検出用の抗血清すら作製されておらず、ゲノム構造も全く明らかになっていない。一方、研究代表者らはCuYVのHSP70遺伝子の塩基配列を決定しており、CuYVがClosterovirus科に属することを明らかにしている。このClosterovirus科には、アブラムシで伝播されるClosterovirus属とコナジラミで伝播されるCrinivirus属があり、CuYVはオンシツコナジラミで伝播されることから後者に属すると考えられている。しかし、Crinivirus属ウイルスについては、全塩基配列はわずかに世界で1例しか報告されおらず、植物ウイルスの中で分子生物学的性状の解析が最も遅れているウイルスグループである。そこで本年度は、このCuYVのRNAゲノムの全塩基配列を世界に先駆けて決定し、そのゲノム構造が既報のCrinivirusとほぼ同じであるがRNA1と2の大きさがが入れ替わった新規のものであることを報告した。また、日本では今まで発生が未確認であったTomato infectious chlorosis virus(TICV)を新たに見出し、その塩基配列の一部を決定するとともにPCRを用いた検出方法を報告した。TICVはCuYVと同様にオンシツコナジラミで媒介され、トマトでの病徴が黄化であることから今までは栄養障害として見過ごされてきた可能性が強い。
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