研究概要 |
キュウリ黄化病は各地のハウス栽培のキュウリやメロンで主に発生してきたが、昨年度は愛知県でもキュウリに発生して大きな被害をもたらしている。しかし、その病原ウイルスのキュウリ黄化ウイルス(cucumber yellows virus, CuYV)は純化できないため、検出用の抗血清すら作製されておらず,ゲノム構造も全く明らかになっていない。そこで、研究代表者らはCuYVの感染植物からウイルス由来の二本鎖RNAを抽出し、PCRあるいはクローニングに用いることが出来ることを示した。本年度はこの方法によりCuYVの全塩基配列を決定し、CuYVがClosterovirus科Crinivirus属のメンバーであるが,今までに知られていないゲノム構造を有することを明らかにした。Closterovirus科には、アブラムシで伝播されるClosterovirus属とコナジラミで伝播されるCrinivirus属があり、CuYVはオンシツコナジラミで伝播されることからも後者に属すると考えられている。そこでさらに本年度は、このCuYVの媒介虫であるオンシツコナジラミからPCR法でCuYVの検出を試みたが,成功しなかった。また、日本では発生が未確認であったTomato in fectious chlorosis virus, TICV)を新たに見出し、その塩基配列の一部を決定するとともにPCR法を用いた検出方法を報告した。TICVはCuYVと同様にオンシツコナジラミで媒介され、トマトでの病徴が黄化であることから今までは栄養障害として見過ごされてきた可能性が強い。さらに、東南アジアで黄化症状を示すキュウリからCuYVの検出を試みたところ、インドネシアとベトナムのサンプルからPCR法でCuYVが検出された。このことから、Crinivirusは最近になって広く東南アジアに分布するようになったと考えられた。
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