研究概要 |
キュウリ黄化病は、わが国のハウス栽培や露地栽培のキュウリやメロンで多発している。また欧米でも広く発生しているが、アジアでの発生の報告はこれまでな:かった。そこで昨年度、東南アジアでの発生を確認して報告したのに続き、本年度はパキスタンのウリ科作物について調査したがその発生は確認できなかった。一方、その病原ウイルスのキュウリ黄化ウイルス(Cucumber yellows virus,CuYV)は純化できないため、検出用の抗血清が作製されていない。本研究でCuYVの感染植物からウイルス由来の二本鎖RNAを抽出し、PCRとクローニングに用いることが出来ることを示した。本年度はまた、未だに純化されていない植物病原ウイルスの遺伝子を二本鎖RNAからクローニングして抗血清を作製出来ることを確認するために、ニンジンの潜伏ウイルスを材料にして実験を行った。その結果、この方法により難純化ウイルスに対する抗血清が作製可能であることが示された。本研究により、CuYVの全塩基配列を決定し、CuYVがClosterovirus科でコナジラミで伝播されるCrinivirus属のメンバーであることを明らかにした。そこでさらに本年度は、このCuYVの媒介虫であるオンシツコナジラミからPCR法でCuYVの検出を試みたが、成功しなかった。また、日本では発生が未確認であったTomato infectious chlorosis virus,TICV)を新たに見出し、その塩基配列の一部を決定するとともにPCR法を用いた検出方法を報告したので、TICVの発生状況を調査したところ、栃木県と群馬県で広く発生していた。TICVのトマトでの病徴が黄化であることから、今までは栄養障害として見過ごされてきた可能性が強い。
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