研究概要 |
キュウリ黄化病はオンシツコナジラミで媒介され、わが国のハウス栽培や露地栽培のキュウリやメロンで多発している。また欧米でも広く発生しているが、これまでそのゲノム構造の解析や全塩基配列に関する報告はなかった。また、その病原ウイルスのキュウリ黄化ウイルス(Cucumber yellows virus, CuYV)は純化できないため、検出用の抗血清が作製されていない。そこで本研究では、まずCuYVの感染植物からウイルス由来の複製型二本鎖RNAを抽出し、PCRとクローニングに用いることが出来ることを示した。さらにこの方法に基づき、CuYVについては約1万5千塩基ものゲノムRNAの塩基配列を世界に先駆けて決定し、CuYVがClosterovirus科でコナジラミで伝播されるCrinivirus属のメンバーであることを明らかにした。また、インドネシアで初の発生を報告した。しかし、CuYVの媒介虫であるオンシツコナジラミからPCR法でCuYVの検出を試みたが、成功しなかった。さらに、パキスタンのウリ科作物では、Crinivirusの発生は確認できなかった。一方、トマトにおいてやはりオンシツコナジラミで媒介されるトマトインフェクシャスクロロシスウイルスを見出し、わが国で初の発生を報告した。このウイルスの発生状況を調査したところ、栃木県と群馬県で広く発生しており、トマトでの病徴が黄化であることから今までは栄養障害として見過ごされてきた可能性が強い。さらに、未だに純化されていない植物病原ウイルスの遺伝子を二本鎖RNAからクローニングして抗血清を作製出来ることを確認するために、ニンジンの潜伏ウイルスを材料にして実験を行った、その結果、この方法により難純化ウイルスに対する抗血清が作製可能であることが示された。
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