研究概要 |
植物病害防除において,自然界に存在し,かつ安全性の高い微生物を利用する生物的防除法に対する期待が高いが,その効果面において生物的防除法は不安定性という問題を抱えている。そこで,土着の微生物群多様性を利用し,安全で,かつ安定性の高い土壌病害防除システムの開発研究のための実験を行っている。具体的な進捗状況は,以下の通り。 1.植物土壌病害発生下での土着微生物群の多様性調査(担当:宍戸) 昨年度の結果を踏まえ,トマト半身萎凋病に有効であった緑肥エンバク野生種の前作すき込みと,そのときに変化する土壌微生物群多様性を,圃場レベルでDNA多型(PCR-DGGE分析),リン脂質脂肪酸(PFLA),基質資化性(CLPP)から解析した。また,小麦フスマ施用と潅水処理(土壌還元消毒法)によって変化するトマト萎凋病菌および青枯病菌の菌密度と,これらの病原菌数が抑制されている場合に増加する土着の嫌気性微生物種をDGGEバンドのクローニングから同定した。さらに,このときに発生する有機酸の特定を試みた。 2.脂肪酸組成による作物根に共生する土着AM菌群のバイオマスと多様性の測定(担当:坂本) AM菌は,リンなどの無機養分を供給することで植物の生育を促進する他,様々な環境ストレスから植物を保護する機能を有している。土着のAM菌群の多様性と土壌病害抑制機能の関係を明らかにするために,本年度は作物根に共生している土着AM菌のバイオマスと多様性を脂肪酸組成によって明らかにする試みを行った。ダイズとナスの根を供試し脂肪酸組成を測定したところ,AM菌に由来する脂肪酸を検出することができた。ダイズにおいては,AM菌の菌根形成率と脂肪酸量との間に正の相関関係が認められた。また脂肪酸組成によってダイズとナスにおけるAM菌の定着状態と多様性の相違を比較することができた。
|