研究概要 |
本研究は、米国カリフォルニア州サクラメントの水田地帯で問題となっているタイヌビエの多除草剤抵抗性獲得に関して、(1)抵抗性(R)と感受性(S)生物型タイヌビエの適応度と(2)抵抗性の機作を明らかにする目的で実施した。本年は、研究2年目にあたり、次のような成果が得られた。 1.抵抗性生物型の適応度 一般に、雑草集団における除草剤抵抗性の発現は、集団内で優占していた適応度の大きいS生物型の個体が除草剤の連用によって淘汰されるために非常に低い頻度で存在していた適応度の小さいR生物型の個体が顕在化する集団遺伝学的過程であると考えられ、タイヌビエのように一年生植物の場合、適応度は次世代に残す種子の数、すなわち個体あたりの生産種子数によって測られる。本年は、この除草剤抵抗性が発現した現場であるカリフォルニア州サクラメントの湛水直播の水田地帯でR,S生物型の生産種子数を計測した。この結果、S生物型に対するR生物型の相対適応度は、0.50〜0.58であり、R生物型が適応度において劣ることが明らかであった。 2.抵抗性の機作 まず、タイヌビエのR, S生物型の幼植物に除草剤thiobencarb, molinate, fenoxaprop-ethylあるいはbispyribac-Naを処理してミクロソーム画分のチトクロームP-450活性と除草剤分解速度を測定した。その結果、R、S生物型タイヌビエともにこれら除草剤によってP450を誘導するが、その誘導されたP450種は単一でなく複数であることを示唆された。また、ミクロソーム画分による除草剤分解速度は、S生物型よりもR生物型で有意に大きかった。つぎに、除草剤処理したタイヌビエの幼植物でmRNAをR,S生物型間で比較した。その結果、S生物型でみられない複数のP-450のP-mRNAがR生物型において検出された。
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