1.各種ミカン科植物(キハダ、ゲッキツ、ハマセンダン、アワダン)の分画と産卵阻害作用 長野県、沖縄県などで採取した4種類の植物のメタノール抽出液を調製し、昨年度の研究で概ね確立した分画方法により、それぞれの植物エキスから複数の画分を得、主にシロオビアゲハの雌成虫を用いて生物試験を行った。まず生葉に対する産卵応答を調べたところ、キハダ(Pa)、ゲッキツ(Mp)、ハマセンダン(Em)、アワダン(Mt)に対する反応はそれぞれ約70、〜0、35、33%程度であり、いずれも本来の寄主植物であるサルカケミカン(Ta)のそれ(約95%)よりも低いため、何らかの阻害物質の存在が予想された。しかし単独で高い産卵刺激活性を示すTaの水溶性画分との混合試料についての産卵試験結果から、Paには殆ど阻害作用はなく、Emもごく弱い阻害作用があるに過ぎないと考えられた。しかし一方で、Mtには中程度の、Mpにはかなり強い産卵阻害物質が含まれていることが判明した。 2.産卵阻害物質の単離と同定 Paはシロオビアゲハに対しては特に産卵阻害作用を示さなかったが、クロアゲハに対しては極めて強い産卵阻害作用を示し、これに関与する活性物質は、フラボノイド配糖体の一種であるフェラムリンと確認された。また、Mpの水溶性画分から阻害物質の1つとして、ニコチン酸誘導体のトリゴネリンを同定した。しかしこれは単独では中程度の産卵阻害作用しか示さないことから他の成分の関与も示唆された。 3.幼虫の成育適性試験 シロオビアゲハの1および5齢幼虫に対してこれら4植物の成育適性度を調べたところ、Emには弱い、Mpにはやや強い、Mtにはかなり強力な摂食阻害物質の含まれていることが判明した。
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