1.シロオビアゲハおよびクロアゲハの産卵応答と幼虫の成育適性 9属9種類のミカン科植物とそれより調製した抽出物や画分に対するシロオビアゲハ雌の産卵応答性を比較し、産卵刺激・阻害物質の存否および幼虫の成育適性を調べた。その結果、各植物の被受容性は、サルカケミカン(Ta)=シークワシャー(Cd)=ハナシンボウギ(Gc)=カラスザンショウ(Fa)>キハダ(Pa)>ハマセンダン(Em)≫コクサギ(Oj)≧ゲッキツ(Mp)=アワダン(Mt)の順であり、Mtには中程度の産卵阻害作用と強い殺虫活性のあることが、またMpにはかなり強い産卵阻害・摂食阻害物質が含まれていると考えられた。Taから産卵刺激物質としてtrans-4-hydroxy-N-methyl-L-prolineおよび2-C-methyl-D-erythronic acidを、Mpから産卵阻害物質としてtrigonellineを同定した。一方、クロアゲハに関してはCd、Ta、Em、Mt、Mp、Paについて調べたところ、幼虫はTa、Mt、Mpでは全く成育できなかった。また、Em、Mtには弱い、Mp、Paには強い産卵阻害物質の存在が認められた。 2.各種植物抽出分画物および関連物質の産卵阻害・繁殖抑制作用 Mp、Mt、Paの各メタノール抽出液から調製した水溶性画分(3%水溶液)、トリゴネリンおよびカフェイン(各塩酸塩の1%水溶液)、フェラムリンおよびMtのイソブタノール画分の展着液(0.02%)を含む分散液(各1%)について、これらを鉢植えのシークワシャーに施用して生物試験を行った。(1)シロオビアゲハの産卵におよぼす影響(葉散布法):MpおよびMtの水溶性画分には強い産卵阻害作用が認められ、トリゴネリン塩酸塩、カフェイン塩酸塩およびMtイソブタノール画分には弱い産卵阻害作用が認められた。(2)オンシツコナジラミの繁殖におよぼす影響(葉散布法):上記各ポットをオンシツコナジラミが多数発生している温室内に約1ヶ月間設置して、その間に生じるオンシツコナジラミの幼虫(蛹を含む)の数を調べたところ、試験開始後26日目には明瞭な差が現れ、水コントロール以外の多くの試料にかなりの繁殖抑制効果が認められた。(3)オンシツコナジラミの繁殖におよぼす影響(土壌散布法):Mp、Mt、Paの各水溶性画分、およびトリゴネリン、カフェイン(いずれも塩酸塩)について、各試料の水溶液を鉢植えのシークワシャーの土に毎週1回施用する方法で約3週間試験したところ、トリゴネリンなど数種の試料にはある程度の抑制効果が見られた。
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