農薬に強い侵入害虫ハモグリバエ類の生物的防除を目的として、在来のナモグリバエを攻撃する土着天敵の利用技術について検討した。ナモグリバエからは3科15種の幼虫寄生蜂および蛹寄生蜂が得られ、11月に定植されたエンドウでは気温の低い2月まで、ナモグリバエが増加し、気温が上昇する3月から土着天敵の寄生率が次第に上昇すること、4月下旬以降では寄生率が100%近い値にまで達することが判明した。これらのことから、地域天敵資源の増殖場所としてエンドウ-ナモグリバエは理想的なシステムとなっていることを明らかにした。天敵群集の種構成は時期およびエンドウ株上での葉齢により異なったが、3月の低温期にはChrysocharis pubicornisが、気温が上昇する4月下旬から5月上旬では幼虫寄生蜂のDiglyphus isaeaやChrysocharis pentheus、幼虫蛹寄生蜂のDacnusa nipponicaが優占した。また、下位葉ではエンドウの被害葉20枚あたり100頭から300頭の寄生蜂が確保可能であった。以上の結果に基づき、地域天敵資源利用マニュアルを作成し、地域農家野菜施設での導入実験を行ったところ、約半数の農家でハモグリバエ類の発生が抑えられた。失敗した農家25%については、エンドウ被害葉の採集部位が不適切であったり、天敵導入前後の農薬散布などが実施されたことが原因として考えられた。
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