日本産6種アブラコバチ:Aphelinus abdominalis、ワタアブラコバチ、キアシアブラコバチ(以下、キアシと略記)、チャバラアブラコバチ(チャバラ)、クロスジアブラコバチ、A.varipes、は4種害虫アブラムシ:ワタアブラムシ、モモアカアブラムシ、チューリップヒゲナガアブラムシ(チューリップヒゲ)、ジャガイモヒゲナガアブラムシ、に寄生する。在来のアブラコバチを生物農薬として実用化するための基礎的研究として、この6種アブラコバチ、特にチャバラとキアシについて、大量生産用の寄主、休眠性および長期冷蔵貝臓法を検討するとともに小型ビニルハウスで放飼試験をおこない、次の結果を得た。 標本調査および寄主選好性実験結果からこれら6種アブラコバチの寄主リストを作成した。エンドウヒゲナガアブラムシはチャバラとキアシに適性が高くソラマメで容易に飼育できるので、両種の大量生産用の寄主として好適である。短日中温条件で、キアシ(京都個体群)は終齢幼虫期(マミー内)、チャバラ(京都個体群)は成虫期に休眠が誘導される。チャバラの京都、高知、鹿児島個体群はいずれも休眠性をもつが、休眠率(短日中温条件で休眠が誘導される個体の割合)に差異がある。休眠率は京都個体群で最も高く、高知個体群、鹿児島個体群の順に低くなる。チャバラ(京都個体群)は、羽化直後から5℃短日条件で保存することにより、非休眠成虫では6週間、休眠成虫では20週間、生存率と休眠終了後の増殖能力を著しく低下することなく貯臓できる。2003年春季に、京都府立大学下鴨農場のチューリップヒゲが発生するトマト栽培小型ビニルハウスに放飼したチャバラとキアシは、ハウス内でよく定着し増殖した。しかし、5月中旬からチューリップヒゲは"天敵からエスケープ"し、さらに6月からは二次捕食寄生バチによる寄生率が高くなり、両種アブラコバチはチューリップヒゲを防除できなかった。
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