イネ白葉枯病菌のもつhrp遺伝子群はtypeIIIタンパク質分泌装置の構成タンパク質をコードしており、本装置を介して感受性イネ品種に対する病原性タンパク質、および抵抗性イネ品種や非宿主植物に対する抵抗性誘導タンパク質を分泌していることが考えられている。本研究課題はこれらの分泌性病原性関連タンパク質を単離・同定することを目的として企画された。本研究の成果は以下の2つに要約することができる。 1)イネ白葉枯病菌のtypeIII分泌タンパク質として、Hpa1、HrpFおよびHrpFを同定することができた。これらのうちHrpEおよびHrpFは感受性イネ品種への病原性、および抵抗性イネ品種や非宿主植物における抵抗反応の誘導に必須であり、一方、Hpa1は感受性イネ品種における病原力の強化に関与する分泌タンパク質であることを示した。 2)植物病原細菌のhrp制御タンパク質は、他のhrp遺伝子やその産物によって構成されるtypeIII分泌タンパク質の発現を制御するとされていたが、イネ白葉枯病菌のhrp制御タンパク質HrpXoはそれらのみならず、typeII分泌タンパク質の発現をも制御することを明らかにし、その一つとしてシステインプロテアーゼと高い相同性をもつタンパク質を同定した。 以上のように、本研究においてはイネ白葉枯病菌のhrp依存分泌タンパク質として4種を同定することができた。しかし、これらは多くの分泌タンパク質のほんの一部にすぎない。今後、他の分泌タンパク質を網羅的に同定し、病原性あるいは抵抗性誘導への関与を明らかにする必要がある。これにより、イネ-白葉枯病菌相互作用の一端が明らかにされうるとともに、ここで得られた情報は本病防除戦略の構築に大きく貢献するものと考える
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