研究概要 |
セクロピア蚕MLE(Mariner-like-element)のITR(Inverted Terminal Repeat)をプライマーとしたlong-PCR法により、日本列島に棲息する11種類の異なる生物種から、同じタイプのMLE(Cecropia-ITR-MLE)を単離することができた。11種類のうち、沖縄本島のクサビライシサンゴと、与那国島のヨナグニ蚕からの配列はtransposaseをコードする完全長のORFを有していたことから、このタイプは水平伝播した、あるいは現在も水平伝播している可能性が考えられた。また、このタイプの生物地理的分布について、サンゴを重点としたいくつかの生物について調べたところ、沖縄を含む日本列島に棲息する生物種以外の、オーストラリアやハワイなどの生物には存在していない可能性が示唆された。このことから、生物の地理的分布とCecropia-ITR-MLEの生物間水平伝播の間に、何らかの相関関係があることが予測された。以上の結果をJ.Insect Biotechnology andに発表した。 また、このタイプの転移活性について現在、ITRをもつDonor Plasmid, Transposaseを持つHelper plasmidおよびTarget plasmidを、培養細胞にco-transfectして転移活性の強さや転移頻度を検定する実験を進めている。この計画を進めるにあたって、インドのDr.Nagarajyuから供試してもらったプラスミドを利用した系、名古屋大学理学部においてはヒトの培養細胞を用いた系で、また新たに構築したプラスミドコンストラクトのカイコ培養細胞を用いた系での検定を、九州大学蚕学講座の協力のもとに進めつつある。
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