研究概要 |
1)Cecropia蚕MLEの末端逆位繰り返し配列(Cecropia-MLE-ITR)をプライマーとして、日本列島各地に生息する鱗翅目昆虫、沖縄に生息するサンゴとバッタ、アジア各地域に生息するクワコに対するPCR増幅を行った。 その結果、沖縄を含む日本列島に生息するいくつかの生物種からは、完全型Transposase配列を持つ配列も含めて水平伝播型配列MLEと考えられるMLEの全長1.3kbpのシングルバンドが増幅された。これに対し、鱗翅目昆虫の1種で、カイコと祖先を同じくすると考えられているクワコにおいては1.3kbpを含む0.5kbpから4.2kpbにわたる数多くの長さのバンドが検出された。4.2kbpのバンドは、2種類の起源を同じくすると考えられるレトロトランスポゾンBMC1とL1Bmが入れ子状態に挿入されたMLE(BmTNML)であり、カイコ(n=28)を特徴づけるバンドであることが報告されている(Tomita et al.,1997;Nakajima et al.,1999)。このような別の配列に挿入されたMLEを比較したところ、n=27個体からのMLEはBmTNMLと系統樹において同じグループに収束した。従って、これらのMLEは、カイコとクワコの共通祖先から夫々n=28およびn=27へ分岐する以前に、共通祖先のゲノムに挿入された古いタイプの配列である可能性が考えられた(Nakajima et al.,2003)。 このクワコ-カイコ型MLE配列は、系統樹上これまで日本列島に生息する鱗翅目昆虫から単離された水平伝播型全長配列とは違うサブグループに位置していた。更にカイコとクワコにおいては1.3kbpのバンドに水平伝播型MLEが含まれていない可能性が支持された。従って、水平伝播方MLEは、日本列島が形成された後に各生物のゲノムに挿入された比較的新しいタイプであることが予測された。 2)ヨナグニ蚕MLEのトランスポゼース(TP : Transpposase)を発現ベクターに組み込み、これをヘルパーとして、ヨナグニ蚕のMLE全長配列をターゲットにpSG1.1を飛ばしたプラスミドとカイコの培養細胞にco-transfectionして転移活性を見た結果、転移活性が認められなかった。その原因として、マリナー因子の転移には、末端の反復配列に加えて、近傍の配列(TAストレッチ)が切り出し反応に必要であることが考えられたため、現在、マリナーの周辺配列を含むドナープラスミドライブラリーを作製中である。
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