研究概要 |
水田および湿地における物理・物理化学的環境自動計測システムの開発の主要な課題の1つとして、水田におけるCO_2ガスの動態を計測するシステムを開発した。本システムは、水田湛水面上の大気を高度(5,20,50,100cm)毎に取り込み、その経時的変化を計測・記録するだけでなく、湛水のpHおよびRpHを自動的に計測することにより、大気と湛水層間におけるCO_2ガスの交換現象を解析できるようにした。その結果、一般に普通の土壌表面からは、土壌微生物および根の呼吸により常時CO_2ガスが放出されているのに対し、湛水された水田では、これとは異なり、日中はCO_2ガスが湛水層に取り込まれ、夜間は逆に放出されているという新たな現象を見いだすことができた。これは、湛水層中の光合成生物によるものであると考えられた。このことは、浅い湛水層をもつ水田および湿原が、温暖化ガスの吸収源として大きな役割を果たしている可能性を示唆している。さらにこのことは、アジアモンスーン地帯における水田の温室効果ガス削減効果を再評価すべきであるという極めて重要な内容をも含んでいると考えている。本システムを今後さらに改良し、定性的だけでなく定量的にもCO_2ガスのフラックスおよび収支が計測できるようにする予定である。また、さらにCO_2ガスの動態は、これまでの研究からO_2ガスの動態とも密接に関連していることが明かであることから、CO_2ガスとO_2ガスの動態を総合的に計測し解析することも必要であり、これらも今後併せて行う予定である。
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