研究概要 |
既に培養法と細胞構成成分分析法により解析が行われた実際の水田圃場を対象とし,その圃場から分離・同定した菌株を活用して,メタン生成古細菌の16S rDNAを対象とした変性剤濃度勾配ゲル電気泳動(DGGE)法を確立し,水田土壌中のメタン生成古細菌群集を解析することを目的とした.平成14年度に,これまでの古細菌用のプライマーをメタン生成古細菌用に塩基配列を変更して設計し,13種類のメタン生成古細菌の純粋培養菌株から抽出したゲノムDNAを用いてPCR増幅およびDGGEの条件の検討を行い,良好な結果が得られた2組のプライマー対(0357F-GC,0691R;0348F-GC,0691R)を用い,メタン生成古細菌を分離した圃場(筑後)および比較対照の圃場(安城)の水田土壌試料より抽出したDNAを対象にDGGEを行った.プライマー対(0357F-GC,0691R)では15〜17本,プライマー対(0348F-GC,0691R)では25〜28本のバンドを有する,どちらも明瞭なパターンが得られ,DGGE解析が可能であった。双方のゲルより合わせて41のバンドを切り出し,塩基配列を決定したところ,全てメタン生成古細菌由来の16S rDNAであり,Methanomicrobiales, MethanosarcinalesおよびRice clusterに近縁であった。以上の結果および平成14年度の検討により得られた結果を総合すると,水田土壌中のメタン生成古細菌群集の解析には,今回確立したプライマー対0357F-GC,0691Rを用いたPCR-DGGE法が最適であると考えられた。今後,上記の2ヶ所の水田圃場のいくつかの試験区より経時的に採取した土壌試料を対象に,水田土壌中におけるメタン生成古細菌群の季節変動,および有機物施用,中干し,落水,裏作などの圃場管理がメタン生成古細菌群に及ぼす影響の解析を本方法を用いて行いたいと考えている。
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