研究概要 |
皮膚表皮は外界からの物理化学的な攻撃に対処するために、上層の細胞を角質化させており、これは細胞内の構造蛋白質が架橋重合されることにより達成される。この架橋重合反応を担うのがトランスグルタミナーゼ(TGase)と呼ばれるカルシウム依存性の酵素である。当然ながら本酵素の発現・活性化は表皮下層では行われず、表皮細胞の分化に伴って生じる。本年度は活性化機構の解明のため、表皮構造蛋白質の架橋化に貢献する2種類のTGase(TGase1,TGase3)のうち、TGase3を中心に活性化機構を解析した。これは未同定のプロテアーゼにより限定分解されてはじめて活性化を受ける。そのプロテアーゼ検索のため、切断部位のアミノ酸配列の決定を行った。ヒトおよびマウスの組換え蛋白質を、in vitroで活性化をすることが知られている、ディスパーゼで切断して配列決定した。この断片生成がin vivoでの限定分解と一致することを、断片特異的なポリクローナル抗体を作製し、反応性を検討した。その結果、皮膚では明確な結果が得られなかったが、同じ角質化が生じているマウス前胃において、明確な反応を示すことができた。現在皮膚での反応性と、組織での免疫染色を検討中である。断片配列からは既知のプロテアーゼは予測されなかった。 一方、これらの研究に平行して、動物タイプのTGaseを持ちかつ障害時に活性増加をする真正粘菌(physarum)を対象にして、そのTGaseの機能解析を行った。具体的には、活性を有する組換え蛋白質の作製、モノクローナル抗体の作製、遺伝子破壊株作製のための系の確立などである。その結果、局在の異なるアイソザイムの発見、免疫染色による発現パターンの解析が行えた。現在、動物の表皮での傷害を模した状況での発現パターンの解析を行っている。
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