多くの酵素は補欠分子族として、低分子有機化合物からなる補酵素を含有しており、補酵素によって、触媒しうる化学反応のレパートリーを広げるとともに、その効率を飛躍的に向上させている。本研究の目的は、このような補酵素を含有する複合型酵素の設計原理を解明するとともに、新規な人工酵素のデザインに応用することにある。今年度は以下の2点について研究を行った 1.ビルトイン補酵素生成機構を解明するため、銅含有アミン酸化酵素のトパキノン補酵素の生成過程を、フリーズドトラップ-X線結晶解析法によって解析した。まず、嫌気条件下で銅イオン共存させてアポ酵素の結晶を調製する。さらに瞬間的に微量の酸素を加え補酵素生成反応を開始する。その直後液体窒素温度で凍結し、反応を停止する。酸素の添加量、反応時間を変えることによって、様々な中間状態をトラップし、凍結状態のままでSpring8のシンクロトロン光を用いて回折データを取得した。その結果、トパキノン補酵素の生成過程における3つの中間体構造を決定することに成功した。解析された各ステップの立体構造を比較することによって、前駆体Tyrのコンフォメーション変化、銅イオンとの相互作用を解明することができた。 2.キノン補酵素やその前駆体化合物を外部から活性中心に導入しやすくするために、銅含有アミン酸化酵素の活性中心のキノン補酵素を取り除いた変異型酵素を作製した。変異導入により、トパキノン前駆体であるTyr残基をAlaとCysに置換し、金属イオン結合部位と活性中心に比較的大きなキャビティをもつアポ酵素遺伝子を作製した。現在それらの発現を調べており、大量に酵素を調製することができれば、次年度以降の補酵素再構成実験に利用する予定である。
|