ビルトイン補酵素生成機構を解明するため、銅含有アミン酸化酵素のトパキノン補酵素(TPQ)の生成過程を、フリーズドトラップ-X線結晶解析法によって解析した。その結果、トパキノン補酵素の生成過程における3つの中間体構造を決定することに成功した。解析された各ステップの立体構造を比較することによって、前駆体Tyrのコンフォメーション変化、銅イオンとの相互作用を解明することができた。また、補酵素生成に必須な銅イオンの結合に関与する保存された3つのHis残基をAla残基に変換して、TPQ生合成に与える影響をX線結晶構造解析と速度論的解析によって調べた。その結果、銅イオンの位置が極めて厳密に決められることが、TPQ生合成において重要であることが判明した。 TPQとは異なる人工的なキノン補酵素を期待して作成したD298K変異型アミン酸化酵素のX線結晶構造解析を行った。銅イオンを添加することによって活性化すると、TPQとは異なる450nm付近に吸収極大をもつクロモフォアが形成されていた。精密な構造解析の結果、382位のチロシンのベンゼン環2位にLys298が共有結合しており、C2-Nεの結合がイミノ二重結合であることが判明した。予定していたリジルチロシルキノンではなかったが、これまでにはない新規なキノン様補酵素の生成に成功した。また、Tyr382をCysに変換したY382C変異型アミン酸化酵素を構築した。コンポジット型キノン補酵素を導入する目的で、Mercaptophenolを添加し、銅イオン存在下補酵素キノン生合成過程を調べた。その結果、キノン様の紫外可視吸収帯の存在は不明確であったが、微弱な酵素活性が認められた。銅イオン非存在下では活性がなかったことから、何らかの補酵素が生成し、その結果酵素活性が生じたことが示された。
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