ユビキノンは補酵素Q(CoQ)とも称される脂溶性抗酸化物質であり、生体内において電子伝達系の必須成分として重要な機能を果たしている。本研究はユビキノン10の側鎖合成酵素であるデカプレニル2リン酸合成酵素の多様性に着目し、酵素の諸性質を解析し、最終的にはユビキノン10の生産へ利用していくことを目的としている。デカプレニル2リン酸合成酵素は細菌などでは単独で酵素活性を発揮するが、真核生物では必ずしも単独で活性はないことが、最近の我々の研究から明らかになりつつある。分裂酵母由来のデカプレニル2リン酸合成酵素遺伝子を単独で大腸菌で発現させても酵素活性を得ることはできないことから、他のタンパク質因子とヘテロダイマーで機能するのではないかということ推測した。そこでデカプレニル2リン酸合成酵素の活性発現に必要な遺伝子をゲノム配上で探し、可能性のある遺伝子を推測し、その後に遺伝子破壊株を構築した。その結果dlp1と命名した新たな遺伝子がデカプレニル2リン酸合成酵素の活性に必須な遺伝子であることを見いだした。dlp1遺伝子はいわゆるプレニル2リン酸合成酵素に相同性が認められるが、典型的な共通な配列を一部欠いており、プレニル2リン酸合成酵素が変化したような形跡が認められる遺伝子である。dlp1遺伝子は先に同定したdps1と同様にユビキノン合成に必須であり、デカプレニル2リン酸合成酵素の活性にも必須な因子であることを見いだした。さらに大腸菌内でdlp1遺伝子とdps1遺伝子を共発現させるとユビキノン10を合成させることができた。その時の活性を調べたところ、確かにデカプレニル2リン酸合成酵素活性を保持しており、DLP1とDPS1は蛋白質レベルで相互作用していることが判明した。従って真核型のデカプレニル2リン酸合成酵素はヘテロマーで機能していることが結論できた。
|