海洋性細菌Pseudolateromonas sp.A28株は、赤潮殺藻物質を菌体外に分泌して赤潮珪藻Skeletonema costatumを殺藻する。A28株が分泌する赤潮殺藻物質の主要成分はセリンプロテアーゼ(EspI)である。本研究では、EspIの赤潮殺藻機構を分子レベルで解明することを目的としている。平成15年度は、すでにクローニングされているaspI遺伝子を用いてEspIの変異蛋白質を生産するためのツールを構築した。EspIはそのC末端領域に50アミノ酸残基から成る特徴的な繰返し配列を有する。そこで、この繰返し配列に着目し、C末端領域を種々の長さに欠失させた変異espI遺伝子を構築した。当初、大腸菌にて変異蛋白質の発現を試みたが、espIとそれ由来の遺伝子は大腸菌に毒性を持つためか、形質転換株の増殖は極めて悪かった。そこで、A28株のespI破壊株を作成し、その破壊株を宿主及び我々が開発したA28株-大腸菌のシャトルベクターをベクターとして大量発現を試みた。しかし、この組合わせでは形質転換株も得られなかった。次いで、Bacillus subtilisの宿主-ベクター系で変異蛋白質の生産を試みたところ、SDS-PAGE/活性染色により培養液上清に変異蛋白質が生産されていることを確認した。改変SWIII寒天培地でS.costatumとB.subtilisの形質転換株の2者培養を行い、それぞれの変異プロテアーゼの赤潮殺藻活性を調べたところ、繰返し配列をまったく持たないプロテアーゼもこのアッセイ系では赤潮殺藻活性を示した。今後、液体培地を用いた二者培養で赤潮殺藻活性をより詳細に検討する必要があろう。
|