硫酸還元菌由来のFMN結合タンパク質について、タンパク質工学的な研究を行った。FMN結合タンパク質と分子量の点で近く、また、補欠分子族としてFMNを結合しているフラボドキシンと比較すると、アミノ酸配列上、Thr-Trp-Asnという配列だけが唯一同一であった。そこで、これらのアミノ酸残基を部位特異的変異法によって、9種類の変異型FMN結合タンパク質を遺伝子工学的に創出し、この配列がFMNとの結合や酸化還元電位にどのような影響を与えているかについて、包括的に考察した。酸化還元電位の測定には、サフラニンTをメディエーターとして用いた。野生型と比べて、Trp残基をAla、Tyr、Phe、His各残基に置換した変異体は、すべて、若干(8から18mV)正にシフトしていた。これにより、このTrp残基側鎖は、酸化還元電位について、それほど重要でないことが示唆された。しかし、FMNをペプチド鎖に結合させる点では、重要であることも明らかにしている。一方、Asn残基をGln、Asp残基に置換した変異体では、結合・酸化還元電位とも、ほとんど変化が見られなかった。Asn残基は、この3残基の中でも保存性が低いことも考えると、重要性が低いことが示唆された。Thr残基をSer残基に置換した改変体では若干(5mV)、Val残基に置換した改変体では、大きく(約60mV)負にシフトしていた。このことから、この位置が親水的な雰囲気であることが、酸化還元電位に対して重要であることが示唆された。そこで、Thr残基をVal残基に置換した改変体について、その結晶を得、X線結晶構造解析を行った。現在、分解能1.5Åのデータを取得しており、高次構造モデルを作成中である。一方、従来、硫酸還元菌はグルコースを利用して成長できないとされてきたが、解糖系酵素を遺伝子工学的に研究することにより、その能力があることを明らかにした。
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