研究概要 |
私はフグの肝臓からテトロドトキシン(TTX)の4位水酸基がL-システインのSに置換された誘導体(4-CysTTX)を単離、構造決定した。一般的な解毒機構として、グルタチオン抱合を経由したシステイン抱合がよく知られている。本年は、TTXの4位のチオール化合物との反応の検討を行った。 1.4.9-anhydroTTXとチオール化合物との非酵素的反応の最適化 4,9-anhydroTTXと大過剰の還元型グルタチオン(GSH)との反応(20度)において、pHにより反応速度が大きく変化することがわかった。pH6.0以下では全く反応せず、pH8.0が至適であり、230分後の収率は86%であった。pH9.0では精製したチオール化物の加水分解が起こり収率は低下した。この反応は、4位の炭素にGSHのSがS_N2反応して起こると考えられた。また、TTX,4-epiTTXとチオール化合物とは全く反応しなかった。その理由としては、水酸基よりもエーテルの方が脱離基として優れているためと考えられた。また、4-GSTTXのpH8.0リン酸buffer中の安定性(20度)について調べ、200分で50%が4,9-anhydroTTXへの加水分解された。 2.4-L-CvsTTX、4-GSTTXのマウス毒性 4-L-CysTTX、4-GSTTXをそれぞれ化学的に調製し、マウス腹腔内投与を行った結果、TTXの41倍量を投与しても全く症状を示さなかった。このことから、4位のチオール化TTXは無毒に近いと考えられた。 3.グルタチオン-S-トランスフェラーゼの関与 本反応への酵素の関与について調べ、グルタチオン-S-トランスフェラーゼ(ブタ、ウマ)で直接TTXとチオール化合物が反応するかを調べたが、反応は起こらず、anhydroTTXとの反応も特に加速されなかった。フグの肝臓ホモジネートでも特に反応の促進はみられなかった。しかし、4-L-CysTTXが,フグの肝臓、腸のみに存在したので、酵素反応の関与は否定できない。
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