研究概要 |
フグは、テトロドトキシン(tetrodotoxin, TTX,1)を肝臓や卵巣に大量に蓄積するが、その蓄積機構や代謝機構は、まだ解明されていない。また、一方、TTXは電位依存性Na^+チャネルの特異的阻害剤として作用し、フグ摂食による食中毒を引き起こし、その解毒剤は現在のところ存在しない。我々はヒガンフグ(Fugu pardalis)肝臓中に新規天然TTX同族体である、4-L-システインTTX(4-CysTTX,2)を見いだした。個体差はあるが、2は、ヒガンフグ肝臓中では1よりも多く存在する場合もあり、フグ肝臓におけるTTXの主要存在形態の1つであると考えられた。本研究では、2の構造の確認と生物活性、TTXとチオール化合物との反応、フグ肝臓中での2の生成機構の考察を行った。 TTX(1)とメルカプトエタノール(ME),GSHとの反応: 純品の1を用いて1と比較的反応し易いチオール及び反応条件を探した結果、pH8.0の緩衝液中、23000等量のME存在下で1.5時間では生成物は検出できなかったが、12時間後には、HPLCで新たなpeakを与え、その生成物4-METTX(6)のHPLC換算の収率は約40%であった。生成した6は、活性炭で処理し、HR-ESI MSで確認した([M+H]^+m/z 380.1091calcd.for[C_<13>H_<22>N_3O_8S],380.1128)。同様の条件でMEなしに、1を放置しても殆ど4を生じなかったので、MEは直接1と反応したと考えられた。一方、GSHも1の約5000等量をpH8.0で反応した場合、8時間後に約5%5を生じた。Cysの場合は、GSHに比べて溶解性が低く1との反応する濃度まで高めることができなかった。このことから、1は4に比べて非常に反応性が悪いがチオールと反応することが示された。4位の立体配置の異なる1,4ともに反応することから、反応中間体は、N3,C4間にイミンを形成しているのではないかと考えられた。以上から、anhydroTTXのみでなく、1のhemiaminal構造にもチオールが反応することが初めて明らかになった。
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