最終年度である平成16年度は以下のような研究を行った。 アザジラクチンについて:アザジラクチンは、昆虫に対し強力な摂食阻害活性ならびに成長阻害活性を示すリモノイドである。多くの研究者が、合成研究を行っているが、その構造の複雑さゆえに未だ全合成は達成されていない。このものの立体選択的全合成研究は、引き続きラセミ体を用いて検討を行った。前年度に引き続き、分子内ディールス・アルダー反応と分子内ラジカル環化反応を鍵とした合成を目指し、ディールス・アルダー反応-脱炭酸クライゼン転位より一気に合成した3環性の化合物からアザジラクチンのA環にある5つの不斉炭素を構築することに成功した。さらに、数工程を経てアザジラクチンの右側部分をシクロペンタン環に単純化したB環形成前駆体のモデル化合物を合成し、ラジカル環化を試みたところ、予想以上に収率良く環化体が得られた。また、この環化反応も立体選択的に進行し、全合成達成に向けての最大の難関をクリアすることが出来た。国内外でアザジラクチン合成研究を行っている他のグループに比べ、工程数も約半分と非常に短く、大変効率の良い合成アプローチを実現しつつある。これにより最初の合成を目指している他グループより一歩リードしたと考えている。 その他の化合物について:アザジラクチン以外にも、昆虫摂食阻害活性が期待されるクレロダンジテルペンであるベラモンの合成も達成した。本合成では、脱炭酸を伴う新規な分子内ロビンソン成環反応を開発し、これにより短工程でオクタロン骨格を立体選択的に構築することが可能となった。
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