発光クラゲは、緑色の発光を行なう。このクラゲは、生体内にイクオリンと呼ばれる発光に必要なエネルギーを生成する発光タンパク質を持っている。イクオリンは、発光基質と酸素およびタンパク質の複合体であり、カルシウムによる誘起により発光基質から一重項励起分子を高率よく形成し、このエネルギーがイクオリン外部に存在する緑色蛍光タンパク質(通称GFP)に効率良くForester型エネルギー移動する。この結果、本来イクオリンは青色の発光を示すが、クラゲは緑色発光を示す。これらのエネルギーが関与する過程は、効率良くおこり、極めて強度の高い発光が行なわれる。本研究では、このエネルギー移動機構を用いた発光をタンパク質のない条件で行なう新しい分析ツールの開発を検討した。クラゲが持っている発光基質分子を環状糖鎖に共有結合し、さらに赤色蛍光分子を共有結合した。この化合物の発光基質分子は、三重項酸素および活性酸素と反応し、一重項励起分子を効率良く生成するようにデザインされている。三重項酸素との反応により生成されたエネルギーは、赤色蛍光分子にエネルギー移動され、赤色の発光を示すことが確かめられた。それに対し、活性酸素との反応の場合には、赤色蛍光分子へのエネルギー移動が起こらず発光基質由来の青色の発光が生じた。ここで合成した化合物は、三重項酸素と活性酸素のシグナルを赤色と青色の異なった発光色にシグナル変換できる特性を有していることが明らかとなった。発光系を用いた活性酸素検出は、感度が良く被検体を破壊することなく非破壊的にモニタリングできることが利点である。しかし、三重項酸素によるバックグラウンド発光の発生が弱点であった。本研究で開発された化合物は、三重項酸素と活性酸素のシグナルを赤色と青色の異なった発行色にシグナル変換できるためこれまでも弱点を一掃できる。
|